KAWASAKI Ninja ZX-10R の2006年式(D型)。KYB製の43mm倒立フロントフォークを装備した世代です。
※近年のZX-10Rに採用されているSHOWA BFF(バランスフリーフロントフォーク)とは、まったく別の構造のフォークです。
このフォーク、素の状態では本来の性能を出し切れていません。構造を見ると、その理由がはっきりします。
トップアウトスプリングという部品
まず前提として、この世代のフォークにはトップアウトスプリングが入っています。
メインスプリングがフォークの沈み込みを支えるのに対し、トップアウトスプリングは伸び切る側を受け持ちます。フォークが伸び切るときに、金属同士が勢いよく当たるのを和らげる役目です。
このバネはメインスプリングと直列に並んでいます。つまり、その分だけフォーク内部の長さを使っています。
ここが重要です。
純正状態で起きていること
2006年式ZX-10Rのフォークを分解すると、こうなっています。
- メインスプリングのレート:0.9kgf/mm
- トップアウトスプリング:かなり硬い
- イニシャル(プリロード):15mm
初期のプリロードが15mmも入っています。
これは、硬いトップアウトスプリングを強制的に潰すためです。
トップアウトが硬いままだと、内部で長さを占有し続けます。そのままでは沈み込みに使えるストロークが足りません。そこでプリロードを締め込み、トップアウトを縮めた状態にして、使えるストロークを確保しているわけです。
力技で成立させている状態と言えます。
何が起きるか
プリロードを過剰にかけた状態には、代償があります。
**1G沈下量が減ります。**車体の重さだけでは、フォークがほとんど沈みません。
初期の支えが強すぎるため、小さな入力に対してフォークが反応しません。路面の細かい凹凸を拾えず、タイヤが路面をとらえている感覚が伝わりにくくなります。
そして伸び側に使えるストロークが減るため、路面が凹んだときにタイヤが追従できません。
メインスプリングのレート自体は0.9kgf/mmと、極端な数値ではありません。問題はバネのレートではなく、過剰なプリロードによって動き出しが押さえ込まれていることです。
解決の方向
やるべきことは、プリロードを過剰にかけなくても済む状態を作ることです。
トップアウトスプリングのレートを落とす
まず、ここです。
トップアウトのレートを下げれば、潰すための過剰なプリロードが不要になります。柔らかいバネは、わずかな力で縮むからです。
占有していた長さの問題が解消されるため、プリロードを適正な範囲に戻しても、必要なストロークが確保できます。
メインスプリングを適正化する
そのうえで、メインスプリングを0.95kgf/mm程度に設定します。
お気づきかもしれませんが、純正の0.9kgf/mmよりわずかに硬くしています。
一般的な「レートを落として柔らかくする」という話とは逆です。しかしこれが正しい方向です。
過剰なプリロードがなくなり、フォークが本来のストロークを使えるようになると、沈み込みを支える役目はメインスプリングが担うことになります。そのために必要なレートが、0.95kgf/mm前後です。
**プリロードで押さえ込むのをやめ、バネで支える。**役割を正しい場所に戻す作業です。
オイルロックピースに加工を加える
加えて、オイルロックピース(フォークが底付きする手前で急激に抵抗を発生させる部品)にも、ひと手間を加えています。
ここまで行うと、驚くほど動きが変わります。
変化の内容
- 動き出しから、フォークがきちんと沈む
- 路面の細かい情報が伝わってくる
- ブレーキで沈む量が予測できる
- 凹凸に対してタイヤが追従する
速くなるというより、バイクが素直になる変化です。2006年式という年式を考えても、まだ十分に楽しめる足回りになります。
車種によって答えは違います
参考までに、同じく大排気量スーパースポーツでも、車両によって手の入れ方は変わります。
たとえばGSX-R1000RのBFFは、トップアウトスプリングが長く柔らかい設計のため、プリロードで潰す方向が成立します。この場合はメインスプリングの交換だけでも結果が出せます。
一方、2006年式ZX-10Rはトップアウトが硬いため、そこを変えないと根本的に解決しません。同じ考え方は通用しません。
車種と年式によって、必要な作業は変わります。ご相談の際は、まず車両を教えてください。
料金
オーバーホールと合わせて、税別13万円程度です。
- フロントフォーク オーバーホール
- トップアウトスプリング交換
- メインスプリング交換
- オイルロックピース加工
作業内容により金額は変動しますので、目安としてお考えください。
ご依頼時に、ライダーの体重と主な使い方をお伺いします。スプリングレートを決めるために必要な情報です。
全国から宅配便でお預かりしています
フロントフォークは車両から外して送っていただければ作業できます。北海道から沖縄まで、全国からご依頼いただいています。
現車確認が不要なため、お住まいの地域を問わずご相談いただけます。
2006年式ZX-10Rのフロントフォークにご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。
ご依頼・ご相談は info@hiiragi-tech.app までどうぞ。