KAWASAKI Z1000Mk2 のフロントフォークのオーバーホールをご依頼いただきました。前後ともにÖHLINS(オーリンズ)を装着した車両です。車両ごとのお預かりで施工しました。
入庫時の状態
オイル漏れが激しい状態でした。
フロントフォークのオイル漏れは、放置すると漏れたオイルがブレーキまわりへ回ることがあります。制動に関わる部分なので、気づいたら早めに手を入れていただきたい症状です。
ガイドブッシュも交換しています
今回のオーバーホールでは、シール類に加えてガイドブッシュも交換しました。
ガイドブッシュは、インナーチューブとアウターチューブの間に入り、両者をまっすぐ支えている部品です。表面にはテフロンなどの低摩擦材がコーティングされています。
見た目で判断できない部品です
ガイドブッシュは、外から見て問題がなさそうでも交換をおすすめする部品です。
理由は、摩耗が目に見えにくいからです。
表面のコーティングは、ストロークのたびに少しずつ削れていきます。やがて下地の銅色が見えてくるのですが、そこまで進む前から性能は落ち始めています。「まだ使えそう」という見た目と、実際の状態は一致しません。
摩耗したガイドブッシュを使い続けると、
- インナーチューブがわずかに傾き、動きが渋くなる
- がたつきが出て、オイルシールに偏った負担がかかる
- 結果として、オイル漏れが再発しやすくなる
せっかくシールを新品にしても、ブッシュが摩耗したままでは、同じ場所に同じ負担がかかり続けます。
分解する機会は、そう何度もありません。開けたときに一緒に交換しておくのが、結果的に無駄がない選択です。
料金
今回はフロントフォークのみの施工で、車両ごとのお預かりでした。脱着工賃を含めて税込10万円程度です。
作業内容により金額は変動しますので、目安としてお考えください。
17インチ化による姿勢の変化
今回の車両は、フロントが17インチ化されていました。
Z1000Mk2の純正は19インチです。小径のホイールに換えると、フロント側の車高が下がります。その結果、キャスター角が起きる方向に変化します。
前の切れ込みが強い
キャスターが起きると、ハンドルの切れが速くなります。
倒し込んだときに、フロントが内側へ入っていこうとする動きが強くなる。いわゆる切れ込みです。
軽快に感じる場合もありますが、度を越すと落ち着きません。狙ったラインより内側に入ってしまい、修正を当て続けることになります。
調整したのはリアのプリロードだけです
ここで行ったのは、リアのプリロードを抜くことだけでした。
プリロードを緩めれば、リアの車高が下がります。リアが下がれば、相対的に前上がりの姿勢になります。つまり、キャスターが寝る方向に戻ります。
フロント側は何も触っていません。リアを下げただけです。
それだけで、印象がだいぶ変わりました。切れ込みが収まり、落ち着いた動きになっています。
「何か変だ」と思ったら、まずスプリングの調整から
ここが、この記事で一番お伝えしたい部分です。
車体の挙動に違和感があるとき、多くの方がまず減衰調整に手を伸ばします。伸び側と圧側のダイヤルは分かりやすい場所にあり、触りやすいからです。
しかし、先に見るべきはスプリングまわりです。
今回のように、原因が車体の姿勢にある場合、減衰をいくら動かしても解決しません。減衰は動く速さに対する抵抗であって、車高やキャスターを変えるものではないからです。
姿勢が崩れているなら、姿勢を直す。順序としてはこちらが先です。
- プリロードを変えれば、車高が変わる
- 車高が変われば、キャスターが変わる
- キャスターが変われば、曲がり方が変わる
前後のバランスを整えてから、減衰を詰める。この順序であれば、調整が噛み合います。
逆の順序だと、合わない前提の上で微調整を繰り返すことになり、いつまでも落ち着きません。
ホイールサイズを変えている車両は特に
旧車では、17インチ化をはじめとした足まわりの変更が珍しくありません。
タイヤの選択肢が広がる、現代的なグリップが得られるなど、利点は確かにあります。一方で、車体の姿勢は確実に変わります。
変更したあと「なんとなく乗りにくい」と感じているなら、前後の車高バランスを見直す価値があります。部品を買い足す前に、手元の調整機構でできることが残っているかもしれません。
ご相談いただければ、現状をお聞きしたうえでご提案します。
お預かりについて
サスペンションは、車両から外して送っていただければ全国どこからでも作業できます。北海道から沖縄まで、宅配便でご依頼いただいています。
今回のようにセッティングまで含める場合は、車両ごとのお預かりとなります。状況に応じてご相談を承ります。
ご依頼・ご相談は info@hiiragi-tech.app までどうぞ。