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サスペンション

SHOWA BFF(バランスフリーフロントフォーク)のオーバーホール ─ 漏れを止めることと、動きを戻すことは別の作業です

KAWASAKI ZX-10R

KAWASAKIフロントフォーク

SHOWA BFF装着車でオイル漏れが起きたとき、「漏れを止める作業」と「減衰を回復させる作業」は別のものです。BFFはカートリッジが密閉構造のため、内部のオイル交換には専用の手順が必要になります。作業の段階と、判断の材料を解説します。

GSX-R1000RやNinja ZX-10Rなどに採用されている、SHOWA BFF(バランスフリーフロントフォーク)。

このフォークからオイルが漏れたとき、「オーバーホールに出せば元に戻る」と考えられる方が多いと思います。

しかし実際には、漏れを止める作業と、動きの質を戻す作業は別のものです。

BFFの構造上そうなります。この記事では、なぜそうなるのか、そして作業にどんな段階があるのかを説明します。オイル漏れで困っている方の判断材料になれば幸いです。

BFFはどういうフォークか

一般的な倒立フォークは、インナーチューブの中にカートリッジダンパーが入っています。そしてフォークオイルは、減衰を生む役目と、インナー・アウターチューブの潤滑の役目を兼ねています。

BFFは、この二つの役目を分けています。

減衰を生むオイルはカートリッジの中に密閉されていて、潤滑用のオイルとは別系統です。減衰調整機構はボトム側にまとめられ、リザーバータンクを持ち、窒素ガスで加圧されています。

この構造により、減衰力が安定し、オイルの寿命も伸びます。性能面では大きな利点です。

ただし整備の面では、特殊な構造ということになります。

一般的なオーバーホールでは、減衰は戻りません

フロントフォークのオーバーホールというと、通常は次のような作業を指します。

  • オイルシール、ダストシールの交換
  • ブッシュの交換
  • フォークオイルの交換

BFFでもこの作業は同じように行えます。そして、これでオイル漏れは止まります。

しかし、ここで交換されるオイルは潤滑用のオイルです。

減衰を生んでいるのは、カートリッジの中に密閉されたオイルの方です。そちらは、この作業では手つかずのまま残ります。

つまり、漏れは止まったが、動きの質は入庫時のままという状態になります。

これは作業の手抜きではありません。BFFの構造上、カートリッジ内部に手を入れるには別の工程が必要だからです。

カートリッジ内部のオイルを交換するには

カートリッジは、ブラケットとインナーチューブを分解することで取り外せます。

そして、内部のオイルを入れ替えるにはバキュームポンプによる注入が必要です。

密閉構造のため、普通に注ぐ方法ではエアが残ります。ダンパーの中に空気が残っていると、その部分ではオイルが圧縮されずに減衰が抜けます。動きが安定しません。

そのため、内部を真空に引いてからオイルを充填し、エアを完全に追い出す必要があります。

加えて、窒素ガスの再充填も必要です。BFFはガスで加圧されており、これはキャビテーション(オイル内に泡が発生して減衰が不安定になる現象)を抑えるための仕組みです。分解した以上、規定圧での再充填が要ります。

ガス充填と真空充填。この二つが、BFFの整備を一般的なフォークと分ける部分です。専用の設備がなければ作業できません。

また部品点数が多く、組み順を誤るとオイル通路を塞いでしまう構造でもあります。手順そのものに注意が要ります。

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作業には段階があります

以上を踏まえると、BFFの整備は目的別に段階が分かれます。

段階1:オイル漏れの修理

  • オイルシール、ダストシールの交換
  • ブッシュの交換
  • 潤滑用オイルの交換
  • 窒素ガスの再充填

**漏れは止まります。**ただし、減衰の回復は含まれません。

「とにかく漏れを止めたい」「動きには特に不満がない」という場合は、これで目的を果たせます。

段階2:段階1+カートリッジ内部のオイル交換

バキュームポンプで内部のオイルを入れ替えます。

減衰を生んでいるオイルが新しくなるため、動きの質が戻ります。

年数の経った個体、走行距離が伸びた個体で「動きが以前と違う」と感じているなら、ここまで必要です。

なお、減衰の仕様(バルビング)そのものは、純正のままで問題ありません。BFFの減衰特性はよくできており、無理に変更する必要のあるものではありません。オイルが新しくなれば、設計どおりの動きが戻ります。

段階3:段階2+メインスプリングの適正化

そして、最も体感差が大きいのがここです。

スプリングの話

BFFの純正メインスプリングは、日本の公道で使うには硬めの設定です。

サーキット走行や、体重のあるライダーを想定した数値になっており、一般的な体重の方が公道で乗ると、バネが仕事をする領域まで沈みません。

そこでレートを落とし、実際に使う荷重域できちんと動くようにします。0.95kg/mm前後が、多くの方にとって適正な範囲です。

搭載位置も変えます

そしてスプリング交換の際、搭載位置をカートリッジの上に変更します。

これが効きます。

フォークの下側は、車体に支えられていないバネ下の領域です。ここが重いと、路面の凹凸に対してタイヤが素早く反応できません。重いものは動き出しにくく、止まりにくいからです。

スプリングの位置を上へ移すことで、バネ下の重量が軽くなります。結果として、路面への追従性が上がります。

レートの適正化と搭載位置の変更。この二つを行うと、同じフォークとは思えないほど動きが変わります。

実際に作りこんで確認しています

SGF時代に実際にBFFを装着したNinja ZX-10Rを購入し、作りこんできました。

依頼されたものを整備するだけでなく、自分の車両で試し、どこをどう変えると何が変わるのかを確認しています。その経験に基づいて、段階ごとのご提案をしています。

トップアウトスプリングについて

もう一段深い話として、トップアウトスプリング(フォークが伸び切る手前で働くバネ)のレートを落とす、という手があります。

実際に使えるストロークを増やせるという効果がありますが、作業にブラケットの取り外しが必要になります。手間に対する効果を考えると、優先順位は低めです。

まずはメインスプリングの適正化まで行い、それでも詰めたい場合に検討する領域だと考えています。

対応車種

BFFを装着している主な車両です。

  • SUZUKI GSX-R1000R
  • KAWASAKI Ninja ZX-10R

どこまでやるか、の判断

BFFのオーバーホールをご検討の際は、何を直したいのかをはっきりさせておくと、話が早く進みます。

  • 漏れているのを止めたいだけ → 段階1
  • 動きが以前と違う、性能を戻したい → 段階2
  • 今より良くしたい、公道で気持ちよく走りたい → 段階3

金額も、段階によって変わります。ご相談の際に、現状と目的をお聞かせください。そのうえでご提案します。

全国から宅配便でお預かりしています

フロントフォークは車両から外して送っていただければ作業できます。北海道から沖縄まで、全国からご依頼いただいています。

現車確認が不要なため、お住まいの地域を問わずご相談いただけます。

ご依頼・ご相談は info@hiiragi-tech.app までどうぞ。