SUZUKI GSX1400 の前後サスペンションのオーバーホール、フロントフォークのスプリング交換、およびセッティングをご依頼いただきました。
この記事では、どんな課題があり、どう詰めていったかを記録として残します。
入庫時の課題
実際に確認すると、フロントに荷重が残ったまま曲がっていく動きでした。
ブレーキで前が沈み、そのまま起き上がらずに旋回に入る。フロントが沈んだままなので、車体の向きが変わるきっかけがつかみにくい状態です。
目指した動き
サスペンションのセッティングでは、先にどういう動きにしたいかを決めます。ここが曖昧だと、調整が迷走します。
今回の目標は、こうです。
- リアがふわっと沈む
- フロントがすっと戻る
- ブレーキのリリースで、シーソーのようなピッチングがきちんと出る
車体が前後に動くこと。沈んだまま固まるのでも、突っ張って動かないのでもなく、荷重の移動に合わせて姿勢が変わっていくこと。これを目指しました。
純正フォークスプリングの問題
入庫時の「前が沈んだまま」という状態は、フォークスプリングの特性から来ていました。
**ブレーキをかけると、すぐに前が沈み込みます。**そして沈んだ先で支えられてしまい、そこから戻ってきません。
沈み込む量が入力に比例しないため、どれだけ握ればどれだけ沈むのかが予測できません。沈んだままの姿勢でコーナーに入っていくことになり、怖さにつながります。
減衰調整では解決できません。減衰は動く速さに対する抵抗であって、支える力そのものではないからです。バネが持っていない支え方を、減衰で作り出すことはできません。
そこで、スプリングそのものを交換しました。
施工内容
- フロントフォーク オーバーホール
- フロントフォーク スプリング交換
- リアショック オーバーホール
- 前後セッティング・試乗確認
今回のセッティングの手順
第1段階:リアから合わせる
セッティングはリアから始めます。
リアの減衰はすべて最弱から。スプリングは油圧アジャスターで1回転入れた位置としました。
GSX1400のリアは、もともとかなり硬めの作りです。同年代の大排気量ネイキッド、たとえばゼファーなどと比べても明らかに硬い設定になっています。
そのため、オーバーホールでリフレッシュするだけで十分に使えます。無理に社外品へ交換する必要のない車両です。
第2段階:フロントを合わせる
フロントは、ブレーキとの連動を意識して確認しました。レバーをどれだけ握ったときに、フロントがどう入っていくか。ここを見ながら詰めていきます。
イニシャル(プリロード)は、最弱から2と3/4回転締めた位置で落ち着きました。それ以上戻した状態も試しましたが、結局この位置に戻す判断となっています。
圧側は当初、最弱から3クリックで様子を見ていました。もう少し強めても良いという感触があったため、最終的に最弱から4クリックで決定しています。
最終セッティング
| 項目 | 設定 | |
|---|---|---|
| フロント | イニシャル(プリロード) | 2と3/4回転 |
| 伸び側 | 最強から7クリック戻し | |
| 圧側 | 最弱から4クリック | |
| リア | イニシャル | 油圧アジャスター 最弱から1回転 |
| 伸び側 | 1 | |
| 圧側 | 1 |
この数値は、この車両とこのオーナーに合わせたものです。体重、乗り方、使う道が変われば適正値も変わります。そのまま真似ても同じ結果にはならない点にご注意ください。
施工後の変化
ブレーキの入力に対して、フロントが同じように入るようになりました。
握った分だけ沈む。握るのをやめれば戻る。この対応関係がはっきりしたことで、どこまで握ればどうなるかが予測できます。
そして、リリースでフロントがすっと戻り、そのまま旋回に入っていきます。
沈んだまま固まっていた状態から、荷重の移動に合わせて車体が動く状態へ。狙っていたシーソーのようなピッチングが出るようになりました。
とてもバランスの良いバイクになったと感じています。
GSX1400で気をつけたいポイント
GSX1400は、車重のある大排気量ネイキッドです。年式も経っており、新車から一度もサスペンション内部に手が入っていない個体も多いはずです。
リアについては前述のとおり、もともとしっかりした作りなので、オーバーホールでの回復が期待できます。
一方フロントは、スプリングの特性そのものが動きを決めています。オイルを換えてもスプリングが同じであれば、ブレーキ時の沈み方は変わりません。
「前が下がる」「ブレーキで沈んだまま」という感覚があるなら、スプリングの交換を検討する価値があります。
料金
今回の作業は、税別200,000円でした。前後オーバーホール、フォークスプリング交換、セッティングを含みます。
作業内容により金額は変動しますので、目安としてお考えください。
お預かりについて
サスペンションは、車両から外して送っていただければ全国どこからでも作業できます。北海道から沖縄まで、宅配便でご依頼いただいています。
ただし今回のようにセッティングまで詰める場合は、試乗が必要になるため車両ごとのお預かりとなります。状況に応じてご相談を承ります。
ご依頼・ご相談は info@hiiragi-tech.app までどうぞ。